太鼓・笛  塚本幸一
Vol.8 1980.1月号掲載1
 手作りで大太鼓、締太鼓、笛を作っていらっしゃる塚本幸一さん(七五才)を紹介させていただきます。市内南西郷亀の甲のご自宅に伺うと、ゆかたをお召しになった塚本さんが出迎えてくれました。

 「失礼ですが、お年をお聞きしてもよろしいでしょうか?」と尋ねると、「ああ、いいどこじゃない。七十五になります。この年になると逆に年令が高い方が自慢になる。なんなら多く言いたい位だよ。」と笑って答えてくれました。

塚本さんは二十五才の時から五十年間も屋台笛を吹いてきたという笛吹きの名人でもあります。「万国博覧会」や「日本のまつり」でも笛を吹いたといいます。大獅子で全国的に有名な仁藤の屋台専属で、毎年お祭りの季節になると、塚本さんの吹く笛の音が町中に響きわたります。

 五〜六年前から退職後の老後の趣味として、太鼓や笛をご自身の手で作り始めました。木工関係の仕事もしていたという塚本さんは、太鼓を支える木の台までも手作り。太鼓は生の楠を一年間位自然乾燥させてから胴をくりぬいていく。この胴をくりぬく作業に二日位。皮だけは浜松の業者に張ってもらい、後はすべて自分で仕上げます。

 横笛はちょうど良い太さの竹を煮て脱脂したあと、竹の中の節をえぐり空洞にしていき、指や口をあてる穴を開け、表面に漆を塗る作業。漆を塗る前に笛の周囲を糸で一定間隔に巻いて、模様を施すことも。先日は掛川東中学の生徒に笛を二十本寄贈されたという。

 退職前には年に五〜六本だったのが今では年に百本くらいは作るといいます。太鼓や、締太鼓も年に十五個位づつ制作。そして、笛の会である「竹友会」に加入されていて三代目「香山」の名を持ち後継者の育成に力を注いでおられます。