薬づけの畑が自然堆肥で生きかえる日
Vol.48 1984.3月号掲載 
 これは、世にも珍しい肥担ぎをしている写真です。ポーズを取っている方が、どこのどなたかはわかりませんが、どうですか、なかなか決まっているでしょう。
 大正か昭和初期の写真ですが、水洗便所や衛生車が発達した現在では、なかなかこんな姿におめにかかれることがなくなりました。手拭いのほっかぶり、足は草鞋(わらじ)履き、という軽装で動きやすそうな服装です。
 男性はこうして両天秤で担ぎましたが、女性は肥桶を天秤棒の中心にもってきて、二人で一つの肥桶を担ぎました。均衡を保たないと歩く度にピチャピチャとはね上がって大変。
 農家の家では野菜などの肥料として使ったので、よく畑の側らに肥溜めが作ってあり、雑草が生えていると、ちょっとした落とし穴のようになってしまう。そこへ、遊びに夢中になっている子どもが落ちてしまうことも度々あった。
 化学肥料に占領されて、出る幕もなくなってしまったが、化学肥料を使わない自然食品が見直されてきている現在、一部の農家で復活の兆しも見えてきた。