その28 変わる子どもたち
きまた たつしろう
 まだプール開き前だというのに、うだるような暑さが続く。子どもたちは、休みの次の日の月曜日と中だるみの木曜日にあくびをしていて、その上にまた暑さにうだってたんよりしている。こんなわけだから授業にのってくる日はほとんどない。まるで焼かれた魚の目のような子どもたちの集団。生きているのかどうかわからない子どもたち。しかし、そんな中でも「妙な」事件が頻々と起こる。

 これから書くことは、ぼくの学校でのことや知り合いの先生方の学校で起こったことなのだが、背筋が寒くなるようなことばかりだ。

・小学校の一年生…。
友だちと数人で遊んでいたらネコがまとわりついてきた。追い払おうとしてもついてきた。そのうち一人の子どもがネコをつかました。そうして、近くにあったドラム缶でひき殺してしまった。そのあと、ある子はそのネコを振り回してドラム缶に何度もたたきつけた。とうとう、ネコの手がとれてしまう。…なんと残酷なことをするのだろう。

・つぎも小さい子…。
小学生と幼稚園児が何人かで遊んでいた。その中のある小学生が、園児に命令して橋の下にカメをさがしにいかせた。橋の上からその小学生は大きな石をその子めがけて投げつけた。頭に当たっていたら命に関わったことになる。幸いにも、園児は五針か六針ぬうだけですんだ。…恐ろしいことである。

・小学校六年生…。
毎日のソフトボールの練習。練習を重ねるとうまいい子とへたな子がはっきりしてくる。うまい子がへたな子に、もんくを言う。そのうちにどなりつけるようになる。とうとう、ある日練習を終えてさよならの後でみんなでとりかこんでふんだりけったりし始めた。そんなことが続いても、学校の休み時間には仲良く遊んでいる。教師は全く気がつかない。…世で言う「いじめっこ、いじめられっこ」である。

・小学校四年生…。
同級生の友だちのやったことが気にくわなくて、ある日野球のバットほどもある木の棒で背中からなぐりかかった。幸いにも、なぐられそうになった子が前につんのめりことなきをえた。

 まだまだにたような話はたくさんある。
・そうじをしっかりやらないからといって、首を絞めて怒るリーダー。絞められた子は目を白黒させていたという。これも一歩間違えば命にかかわる。
・水道の水を飲んでいる子の後ろから不意にお尻をけり上げる子。
・座っている無防備の子のイスを突然引いて、頭からひっくり返るのを見て、愉快そうに笑っている子。うらみもなんにもないのにである。

 ある先生が「この頃、子どもが見えなくなったやぁ。なんだか、先生をやっている自信をなくしたやぁ」と悲しそうに言っていたのを思い出す。
 熱心な先生ほど、体当たりでがんばっている先生ほどそんなことを、ふっともらす。教室では素直であったり、おとなしかったりする子どもたちばかりなのに、そう思うとおそろしい。もちろん、きっと親の前でもいい子であるにちがいない。

日本中の子どもが、確実に変わってきている。
十年前のこどもとは、明らかにちがう。