掛川茶
Vol.14 1981.5月号掲載
山本欽二
 新茶の季節も近づき、掛川の中では今年の茶の動きが活発になり、話題となっている。昨年、一昨年の令霜害による痛手に農家はもとより茶商も消費者も何らかの形で影響を受けていたので、「今年は」の期待の大きさも分かる。冬の厳しい寒さからの解放と共に、今迄つちかって来た茶園管理に一層力を入れている時期、各地にファンをつけた高いコン柱が立ち並ぶ。少しでも冷霜害から守ろうとする意欲の表れである。

 掛川の農産物の中で生産量、生産額共に一位を占める茶の好、不況が市内の景気に大きく影響を及ぼすのも分かる。生産が増えれば当然価格は下がる。良い品が安くなれば、消費者にとっては良い事であるが、一つ考えてほしいのは、どの農産物にも言える事だが、再生産が不可能な価格に迄下がってしまうと農家の生産意欲は下がり、二、三年後は悪い品が高くなるという時が来る。一年単品でありながら大きく後へ尾を引くのが特徴と言える一次産品の米の生産調整や酪農、みかん等農産物の過剰の中で、次が茶だと見るのは私一人だけではないと思う。

 そこで皆さん、この産物を掛川の特産として全国一を保つ為に努力をしてみませんか?消費者の皆さんにはまず地元のお茶の味を全国の知人友人に味わってもらい、掛川茶の愛飲家になってもらう事をお願いしたい。生産家には、特色ある茶の生産に一層力を入れると共にどんな状態でも変わらない味の茶、つまり湯温差を気にしなくても同じような味が出る茶の生産に心掛けるべきだろう。皆で心掛ければ産地間競争にも勝つ事が出来るだろう。掛川の発展にもつながる事であると思う。

 それからもう一つ大事なことに、農薬の事がある。一説には「農薬づけの茶」というイメージがあるが、現在の農家の中に高い農薬をふんだんにかけたりして農薬づけにする馬鹿はいないし、指導の面でも残留のない農薬を選択しながら、適期防除を心掛けている事を記しておく。